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福沢文明塾 コア・プログラム講義録

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第15期コア・プログラム
ストラテジック・リーダーシップ
「与えられた一度の人生」

講師:麻生泰
(株式会社麻生 代表取締役会長)
ライター:永井祐子
セッション開催日:2016年6月18日

 

筑豊御三家と称された名門麻生家の三男として生まれた麻生さん。株式会社麻生の代表取締役会長として医療や教育など幅広い分野のグループ企業を率いるのみならず、2013年には九州経済連合会の会長にも就任している。地方から日本を動かしたいという熱い想いと、若者へのメッセージを語っていただいた。
右手にトレンドを、左手で自分の強みを握る
幼少からの足跡を振り返る中で、人生に影響を与えたものとして麻生さんが挙げたのは、カトリックと運動部での経験だ。吉田茂の妻である母方の祖母が熱心な信者だったこともあり母がカトリックで、毎週日曜はミサに通うという家庭に育った。「慶應幼稚舎5,6年の頃はカトリックの学校に教育を受けに行ったこともあります。その教えからは今も影響を受けていると感じています」。運動部は、小学生の高学年から山岳部やラグビー部に所属。「大して体が大きくない自分は、人よりたくさん練習し、最後まで粘ってがんばるしかありませんでした。そのことは私に大きな課題を与えてくれたと思います。そして、苦しいときも後ろ姿で見せるしかないというリーダーのあり方も、ラグビーから学びました」。
大学卒業後はオックスフォード大学への留学を経て一般企業に就職したが、長兄である太郎氏の政界進出に伴い家業を継ぐことになり、現在に至る。そんな麻生さんが考えるリーダーにとって重要なこととは、どういうものであろうか。
まずは、目標設定。「目標は簡単すぎても高すぎてもダメで、“Not easy, but not impossible”というものを設定しなくてはいけません。松下幸之助氏は、経営者として何を目的にしているのか、最重要課題は何なのかということを書いていたそうですが、私も毎年それをメッセージとして発信しています」。
経営方針や目標を考えるときのポイントは、<右手>で世の中の流れをつかみ、<左手>にはこれなら勝負ができるという自分の強みを握ること。「たとえば、アジア諸国のマーケットが伸長していくなかで、日本は少子高齢化に直面し国内市場は煮詰まっていくし、財務体質にも問題を抱えています。そういう自分の力では動かせない社会のトレンドを見極めながら、一方で自分の会社はどういう可能性で差別化していけるのかということを考えてみるのです」。
語学力、体力、魅力を備えたグローバルシチズンであれ
これから社会に出て行く若者に対しては、グローバルシチズンとなることの重要性を説く。「日本語が分かる人は世界に2%しかいません。残りの98%とコミュニケーションが取れない人を、私たちは採用しません。縮小する日本のマーケットだけにしがみついていられない以上、もっとグローバルにならないと企業は生き残れないからです」。そのために英語は不可欠だが、それに加えて自ら発信していく力やコミュニケーション力も必要だ。「皆さんが想像する以上に、世界における日本のプレゼンスは低く、『日本って昔はすごかったんだよね』などと過去形で言う人も出てきているぐらいな状況なのです。それなのに危機感がないというのは私たち経営者の責任ですが、若い皆さんにも危機感を持って臨んで欲しいと思います」。
語学に加えて、若者が身に着けるべき力は体力と魅力だとも言う。「体力は、たぶん皆さんが今思っているよりもずっと大事です。私が70歳になる今でもがんばれるのは、若い頃に運動で鍛えたからであり、今も健康は意識しています。魅力という意味では、ちょっとした気配りやマナー、さらにあの人はこれに詳しい、これは誰にも負けないものをもっている、そういうことも必要です。語学力、体力、魅力をぜひ磨いていってください」。
“How lucky we are.”と感謝して、世の中の役に立つ
さまざまな分野で活躍する麻生さんの夢のひとつは、地元の福岡県飯塚市で経営している飯塚病院を“日本一のまごころ病院”にすることだ。「スタッフが誰も辞めない、患者さんもみんなが来たくなる、そんな病院にしたいのです。飯塚市は高齢者の多い街ですが、ゆくゆくは明るくて元気で医療費のかからない<健やかに老いる街>にするというのが私の夢です」。
それを可能にするために、いかに無理無駄ムラをなくすか。「現在、日本の国公立の病院は国からの補助金で赤字補填をしているところがほとんどです。今後国の経済はさらに厳しくなっていくわけですから、もっと経営のマインドを持つ必要がある。人のせいにして批判するのではなく、それを脱却するための方法を私たち民間病院から発信していきたいと考えています」。
そんな夢を支えている最大の源は志だ。「飯塚のためになりたい。飯塚を変えるのは麻生グループしかいないと思っています。そして、飯塚から日本を変えたいと願っています。課題先進国である日本でひとつのモデルケースを作ることは、世界への貢献にもつながると自負しています」。
育った環境もビジネスの世界に入ってからの出来事も、自分は本当に恵まれていて運がいいと感じているという麻生さん。「それは、両親からの応援をはじめとして、さまざまな人との出会いのおかげだと感謝しています。カトリックの影響もあるかもしれませんが、これだけ恵まれた環境に生まれ育っている以上、その分何かをして世の中の役に立たなければという思いはあります」。
そして、私たちは日本という国に生まれたこと自体も感謝するべきだと指摘する。全世界72億人の中での恵まれた存在として、上を見れば切りはないし不平不満はあったとしても、下を見ればもっと困っている人たちがたくさんいる。「皆さんと同じ年代でも、食べる物がなかったり戦争状態にいたりする人も大勢います。“How lucky we are.”ということに気づいてほしい。ないものねだりをするのではなく、今自分が与えられているものに感謝をして、その才能を地方のため、国のために使い、あるいは海外に出て行って活躍してもらいたいのです」。
チャンスは降ってくるのではなく、自分から取りに行くもの。「あの人にばかりチャンスが振ってきていいなとうらやむのではなく、今の自分には魅力ある仕事が降ってくるだけの魅力がないのだと自覚するべきです。この場にいる皆さんはそれだけのポテンシャルを持っているのですから。ぜひ、がんばって欲しいと思います。」
<質疑応答>
最後はコツコツが勝つ
【塾生】
麻生さん自身が大変エネルギッシュでありながらチャーミングな方と感じます。その魅力はどこから来るのでしょうか?
【麻生さん】
そう言っていただけるのはうれしいし、学生時代にラグビー部でキャプテンになるなど、なぜかまとめ役になっているという感じはありますが、特にテクニックはありません。ただ、恵まれた才能はないと自覚している分、努力はしているつもりです。人より時間をかける必要があるのだから、その分映画やテレビはあまり見ないなど犠牲にしている部分もあります。毎日、その日に会った人、もらった情報などを忘れないようにメモをし、夜に日記に書くということを長年続けており、今日も持ってきたこの日記帳は128冊目になります。福澤先生は「習慣はひとつの才能である」と言っていますが、とにかくコツコツと続けること。最後はそれが勝つのだと信じています。
思いと工夫で、仕掛けと仕組みを作る
【塾生】
何か大きなことをするには価値観の違いや対立、反対が生まれがちです。それをどうまとめていけばいいでしょうか?
【麻生さん】
まずは誰がキーマンなのかを見極め、その人の弱点や誰の言葉なら耳を傾けるのかなどを考えて、仕掛けや仕込みをします。たとえば、動いてくれそうな、あるいは耳を貸してくれそうな上司に話を流すとか。壁があったとしても、それを嘆くのではなくどう崩すのかという工夫を考えるのです。やろうとしていることが世の中のトレンド合っていれば、必ずチャンスはあります。自分の思いと努力で工夫して、仕掛けや仕組みを作っていくこがヒントになると思います。
【塾生】
明るい職場づくりのために、リーダーができること、あるいは社員一人ひとりがボトムアップできることは何でしょうか?
【麻生さん】
社員ひとりではできないから、まずは仲間をつくってムーブメントにしていくことが大事だと思います。3,4人集まったら、話しやすい上司を捕まえていっしょにやりましょうと仕掛けてみる。その噂が話の分かる常務に流れて心証がいいということになれば、課長ももっとやろうと言い出す。そういう形のボトムアップがいいのではないでしょうか。明るい職場やワークライフバランスというのは今大きな問題になっていますから、<右手>は合っています。あとは仕掛け方次第なので工夫してみてください。
日本人の強みを使ってないのはもったいない
【塾生】
日本人の魅力という意味で、麻生さんが感じる世界の中での日本人の強みとは何でしょうか。私たちはどういうポイントを胸に抱けばいいのかアドバイスをお願いします。
【麻生さん】
識字率が高いこと、カイゼンという文化が当たり前にあること、そして目標が決まるとみんなでがんばるというチームワークですね。でも、現状はそれを使っていないし、危機感も持ってない点が問題です。たとえば語学力で言うと、父の世代より私の世代、そして息子の世代と確実に英語を話せる人は増えています。でも、お隣の韓国の世代差はもっと大きく、若い世代はまったく英語に苦労しないばかりか中国語まで話せる人がたくさんいる。人口が4400万人の彼らは英語が話せなければお金を得られないという危機感があり、その結果30億人とコミュニケーションできる。日本人のグローバル対応力は過去から比べれば伸びているとはいっても、まだまだです。これから留学に行かれる方は、いろいろなサポートのおかげでそれができることに感謝して、帰ったらあれやろう、これができるんじゃないかといろいろなことをメモして持ち帰って欲しいと思います。日本の特殊な世界を離れて視界が広がると、いろいろなヒントがあるはずです。
【塾生】
日本は実際どのぐらい厳しいのか、詳しく教えて下さい。
【麻生さん】
あまりネガティブには伝えたくないのですが、私が特に厳しいと思うのは、数字が良くない割には危機感がないことです。今、日本の内部はガタガタで、たとえば年収500万円の家庭が1100万円の借金を負っている状況です。今は金利が1%程度だからいいけれど、海外の投資家が不安になって3%4%払えという時代が来るかもしれません。先ほど言ったような日本人としての魅力はたくさんあるのに、その潜在的な力を使っていないというのももったいないことです。
スタートを大事にして、とんがりを作っていく
【塾生】
これからの働く若者に期待することは何ですか?
【麻生さん】
会社に入ったら、どういう上司になりたいのか35歳ぐらいの目標を据えながら、自分のとんがりを作っていくことが大事だと思います。マラソンで言えば1kmぐらい走れば本気なのか遊びなのか分かるように、新入社員も2年ぐらい見ていると、「鈍いけど毎日がんばっているな」「将来光りそうだ」、あるいは「取り間違えたな」などということが分かるものです。上司もいろいろ経験してきていますから、よく見ています。最初に悪い印象を持たれてそのイメージがついてしまうのは不利ですから、最初の1,2年はすごく大事です。
<クロージングメッセージ>
感謝の心を忘れずに、積極的に運を取りに行く
運は降ってはきません。5は降ってくるとしても、自ら取りに行く人は35を取ります。5で満足しているならそれでもいいけれど、これだけ恵まれた国にいてこれだけの教育を受けている以上、ぜひ積極的により大きな運を取りに行って欲しい。そうでないと、世界中にたくさんいる一生懸命頑張っている人たちに申し訳ないです。今の自分は誰のおかげでここまで来たのか、両親や先生、まわりの人に感謝して、“How lucky I am.”ということを忘れずに、ぜひがんばっていい人生を送って下さい。「日本はすごいね」と言ってもらえる間に、どう経済をキャッチアップして起動に乗せるか。私自身も偉そうな分析に時間をかけていないで、何の役に立ったのかという話を語れるようにがんばりたいと思っています。
<編集後記>
「自分はシャープじゃない分コツコツ努力する」という言葉そのままに、この日も綿密な準備をして臨んでいただいたようだ。兄の太郎氏を彷彿させるユーモアを交えた親しみやすい口調で、短い時間に少しでも多くのことを伝えようとする姿からは、未来の日本を担う若者への大きな期待が感じられた。

筑豊御三家と称された名門麻生家の三男として生まれた麻生さん。株式会社麻生の代表取締役会長として医療や教育など幅広い分野のグループ企業を率いるのみならず、2013年には九州経済連合会の会長にも就任している。地方から日本を動かしたいという熱い想いと、若者へのメッセージを語っていただいた。

 

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右手にトレンドを、左手で自分の強みを握る

 

幼少からの足跡を振り返る中で、人生に影響を与えたものとして麻生さんが挙げたのは、カトリックと運動部での経験だ。吉田茂の妻である母方の祖母が熱心な信者だったこともあり母がカトリックで、毎週日曜はミサに通うという家庭に育った。「慶應幼稚舎5,6年の頃はカトリックの学校に教育を受けに行ったこともあります。その教えからは今も影響を受けていると感じています」。運動部は、小学生の高学年から山岳部やラグビー部に所属。「大して体が大きくない自分は、人よりたくさん練習し、最後まで粘ってがんばるしかありませんでした。そのことは私に大きな課題を与えてくれたと思います。そして、苦しいときも後ろ姿で見せるしかないというリーダーのあり方も、ラグビーから学びました」。

 

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大学卒業後はオックスフォード大学への留学を経て一般企業に就職したが、長兄である太郎氏の政界進出に伴い家業を継ぐことになり、現在に至る。そんな麻生さんが考えるリーダーにとって重要なこととは、どういうものであろうか。

 

まずは、目標設定。「目標は簡単すぎても高すぎてもダメで、“Not easy, but not impossible”というものを設定しなくてはいけません。松下幸之助氏は、経営者として何を目的にしているのか、最重要課題は何なのかということを書いていたそうですが、私も毎年それをメッセージとして発信しています」。

経営方針や目標を考えるときのポイントは、<右手>で世の中の流れをつかみ、<左手>にはこれなら勝負ができるという自分の強みを握ること。「たとえば、アジア諸国のマーケットが伸長していくなかで、日本は少子高齢化に直面し国内市場は煮詰まっていくし、財務体質にも問題を抱えています。そういう自分の力では動かせない社会のトレンドを見極めながら、一方で自分の会社はどういう可能性で差別化していけるのかということを考えてみるのです」。

 

 

語学力、体力、魅力を備えたグローバルシチズンであれ

 

これから社会に出て行く若者に対しては、グローバルシチズンとなることの重要性を説く。「日本語が分かる人は世界に2%しかいません。残りの98%とコミュニケーションが取れない人を、私たちは採用しません。縮小する日本のマーケットだけにしがみついていられない以上、もっとグローバルにならないと企業は生き残れないからです」。そのために英語は不可欠だが、それに加えて自ら発信していく力やコミュニケーション力も必要だ。「皆さんが想像する以上に、世界における日本のプレゼンスは低く、『日本って昔はすごかったんだよね』などと過去形で言う人も出てきているぐらいな状況なのです。それなのに危機感がないというのは私たち経営者の責任ですが、若い皆さんにも危機感を持って臨んで欲しいと思います」。

 

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語学に加えて、若者が身に着けるべき力は体力と魅力だとも言う。「体力は、たぶん皆さんが今思っているよりもずっと大事です。私が70歳になる今でもがんばれるのは、若い頃に運動で鍛えたからであり、今も健康は意識しています。魅力という意味では、ちょっとした気配りやマナー、さらにあの人はこれに詳しい、これは誰にも負けないものをもっている、そういうことも必要です。語学力、体力、魅力をぜひ磨いていってください」。

 

 

“How lucky we are.”と感謝して、世の中の役に立つ

 

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さまざまな分野で活躍する麻生さんの夢のひとつは、地元の福岡県飯塚市で経営している飯塚病院を“日本一のまごころ病院”にすることだ。「スタッフが誰も辞めない、患者さんもみんなが来たくなる、そんな病院にしたいのです。飯塚市は高齢者の多い街ですが、ゆくゆくは明るくて元気で医療費のかからない<健やかに老いる街>にするというのが私の夢です」。

 

それを可能にするために、いかに無理無駄ムラをなくすか。「現在、日本の国公立の病院は国からの補助金で赤字補填をしているところがほとんどです。今後国の経済はさらに厳しくなっていくわけですから、もっと経営のマインドを持つ必要がある。人のせいにして批判するのではなく、それを脱却するための方法を私たち民間病院から発信していきたいと考えています」。

そんな夢を支えている最大の源は志だ。「飯塚のためになりたい。飯塚を変えるのは麻生グループしかいないと思っています。そして、飯塚から日本を変えたいと願っています。課題先進国である日本でひとつのモデルケースを作ることは、世界への貢献にもつながると自負しています」。

 

麻生07.JPG

育った環境もビジネスの世界に入ってからの出来事も、自分は本当に恵まれていて運がいいと感じているという麻生さん。「それは、両親からの応援をはじめとして、さまざまな人との出会いのおかげだと感謝しています。カトリックの影響もあるかもしれませんが、これだけ恵まれた環境に生まれ育っている以上、その分何かをして世の中の役に立たなければという思いはあります」。

 

そして、私たちは日本という国に生まれたこと自体も感謝するべきだと指摘する。全世界72億人の中での恵まれた存在として、上を見れば切りはないし不平不満はあったとしても、下を見ればもっと困っている人たちがたくさんいる。「皆さんと同じ年代でも、食べる物がなかったり戦争状態にいたりする人も大勢います。“How lucky we are.”ということに気づいてほしい。ないものねだりをするのではなく、今自分が与えられているものに感謝をして、その才能を地方のため、国のために使い、あるいは海外に出て行って活躍してもらいたいのです」。

チャンスは降ってくるのではなく、自分から取りに行くもの。「あの人にばかりチャンスが振ってきていいなとうらやむのではなく、今の自分には魅力ある仕事が降ってくるだけの魅力がないのだと自覚するべきです。この場にいる皆さんはそれだけのポテンシャルを持っているのですから。ぜひ、がんばって欲しいと思います。」

 

<質疑応答>

最後はコツコツが勝つ

 

【塾生】

麻生さん自身が大変エネルギッシュでありながらチャーミングな方と感じます。その魅力はどこから来るのでしょうか?

 

 

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【麻生さん】

そう言っていただけるのはうれしいし、学生時代にラグビー部でキャプテンになるなど、なぜかまとめ役になっているという感じはありますが、特にテクニックはありません。ただ、恵まれた才能はないと自覚している分、努力はしているつもりです。人より時間をかける必要があるのだから、その分映画やテレビはあまり見ないなど犠牲にしている部分もあります。毎日、その日に会った人、もらった情報などを忘れないようにメモをし、夜に日記に書くということを長年続けており、今日も持ってきたこの日記帳は128冊目になります。福澤先生は「習慣はひとつの才能である」と言っていますが、とにかくコツコツと続けること。最後はそれが勝つのだと信じています。

 

思いと工夫で、仕掛けと仕組みを作る

 

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【塾生】

何か大きなことをするには価値観の違いや対立、反対が生まれがちです。それをどうまとめていけばいいでしょうか?

 

【麻生さん】

まずは誰がキーマンなのかを見極め、その人の弱点や誰の言葉なら耳を傾けるのかなどを考えて、仕掛けや仕込みをします。たとえば、動いてくれそうな、あるいは耳を貸してくれそうな上司に話を流すとか。壁があったとしても、それを嘆くのではなくどう崩すのかという工夫を考えるのです。やろうとしていることが世の中のトレンド合っていれば、必ずチャンスはあります。自分の思いと努力で工夫して、仕掛けや仕組みを作っていくこがヒントになると思います。

 

【塾生】

明るい職場づくりのために、リーダーができること、あるいは社員一人ひとりがボトムアップできることは何でしょうか?

 

【麻生さん】

社員ひとりではできないから、まずは仲間をつくってムーブメントにしていくことが大事だと思います。3,4人集まったら、話しやすい上司を捕まえていっしょにやりましょうと仕掛けてみる。その噂が話の分かる常務に流れて心証がいいということになれば、課長ももっとやろうと言い出す。そういう形のボトムアップがいいのではないでしょうか。明るい職場やワークライフバランスというのは今大きな問題になっていますから、<右手>は合っています。あとは仕掛け方次第なので工夫してみてください。

 

日本人の強みを使ってないのはもったいない

 

【塾生】

日本人の魅力という意味で、麻生さんが感じる世界の中での日本人の強みとは何でしょうか。私たちはどういうポイントを胸に抱けばいいのかアドバイスをお願いします。

 

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【麻生さん】

識字率が高いこと、カイゼンという文化が当たり前にあること、そして目標が決まるとみんなでがんばるというチームワークですね。でも、現状はそれを使っていないし、危機感も持ってない点が問題です。たとえば語学力で言うと、父の世代より私の世代、そして息子の世代と確実に英語を話せる人は増えています。でも、お隣の韓国の世代差はもっと大きく、若い世代はまったく英語に苦労しないばかりか中国語まで話せる人がたくさんいる。人口が4400万人の彼らは英語が話せなければお金を得られないという危機感があり、その結果30億人とコミュニケーションできる。日本人のグローバル対応力は過去から比べれば伸びているとはいっても、まだまだです。これから留学に行かれる方は、いろいろなサポートのおかげでそれができることに感謝して、帰ったらあれやろう、これができるんじゃないかといろいろなことをメモして持ち帰って欲しいと思います。日本の特殊な世界を離れて視界が広がると、いろいろなヒントがあるはずです。

 

 

麻生11.JPG

【塾生】

日本は実際どのぐらい厳しいのか、詳しく教えて下さい。

 

【麻生さん】

あまりネガティブには伝えたくないのですが、私が特に厳しいと思うのは、数字が良くない割には危機感がないことです。今、日本の内部はガタガタで、たとえば年収500万円の家庭が1100万円の借金を負っている状況です。今は金利が1%程度だからいいけれど、海外の投資家が不安になって3%4%払えという時代が来るかもしれません。先ほど言ったような日本人としての魅力はたくさんあるのに、その潜在的な力を使っていないというのももったいないことです。

 

スタートを大事にして、とんがりを作っていく 

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【塾生】

これからの働く若者に期待することは何ですか?

 

【麻生さん】

会社に入ったら、どういう上司になりたいのか35歳ぐらいの目標を据えながら、自分のとんがりを作っていくことが大事だと思います。マラソンで言えば1kmぐらい走れば本気なのか遊びなのか分かるように、新入社員も2年ぐらい見ていると、「鈍いけど毎日がんばっているな」「将来光りそうだ」、あるいは「取り間違えたな」などということが分かるものです。上司もいろいろ経験してきていますから、よく見ています。最初に悪い印象を持たれてそのイメージがついてしまうのは不利ですから、最初の1,2年はすごく大事です。

 

<クロージングメッセージ>

感謝の心を忘れずに、積極的に運を取りに行く

 

麻生13.JPG

運は降ってはきません。5は降ってくるとしても、自ら取りに行く人は35を取ります。5で満足しているならそれでもいいけれど、これだけ恵まれた国にいてこれだけの教育を受けている以上、ぜひ積極的により大きな運を取りに行って欲しい。そうでないと、世界中にたくさんいる一生懸命頑張っている人たちに申し訳ないです。今の自分は誰のおかげでここまで来たのか、両親や先生、まわりの人に感謝して、“How lucky I am.”ということを忘れずに、ぜひがんばっていい人生を送って下さい。「日本はすごいね」と言ってもらえる間に、どう経済をキャッチアップして起動に乗せるか。私自身も偉そうな分析に時間をかけていないで、何の役に立ったのかという話を語れるようにがんばりたいと思っています。

 

 

<編集後記>

「自分はシャープじゃない分コツコツ努力する」という言葉そのままに、この日も綿密な準備をして臨んでいただいたようだ。兄の太郎氏を彷彿させるユーモアを交えた親しみやすい口調で、短い時間に少しでも多くのことを伝えようとする姿からは、未来の日本を担う若者への大きな期待が感じられた。

 

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次回予告

  • 第17期コア・プログラム
    ストラテジック・リーダーシップ
    「観光先進国日本の進むべき道」

    伊達美和子
    (森トラスト株式会社 代表取締役社長)

  • 第17期コア・プログラム
    ストラテジック・リーダーシップ
    「不確実な時代におけるリーダーシップ」

    鈴木健一郎
    (鈴与株式会社 代表取締役社長)

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