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福沢文明塾 コア・プログラム講義録

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第10期 コア・プログラム
特別セッション
行動のプリンシプル~自分と世界を変える原理原則

講師:久米 信行
久米繊維工業株式会社 取締役会長
インタビュアー:本間 浩一(慶應義塾大学福澤諭吉記念文明塾 キュレーター)
ライター:永井 祐子
セッション開催日:2013年11月14日

 

今回講師にお迎えした久米さんは、家業の三代目として老舗国産Tシャツメーカーを経営する傍ら、IT系メディアや本の執筆、地域起こし系のNPO、大学でベンチャービジネス論を教えるなど、多彩な活動を行っている。それらの体験を元に、自らを支え行動にかき立てる「プリンシプル」について考えるセッションが行われた。
一期一会を生かしきる
久米さん自身のプリンシプルのひとつは「一期一会を生かしきる」ことだ。そのために大事なのは、会う前に相手のことをよく調べて愛情を持つことなのだという。「会いたい人がいたら、その人が好きなものや一番大切にしていることを調べてください。会ったときにそのことを伝えて相手とシンクロできれば、親しくなれるチャンスが生まれるかもしれません」。
トップセールスマンは、顧客の好きなものを知っていれば営業は半分以上終わったようなものだというが、昔は接待ゴルフを何度もやってようやく聞き出していた情報を、今はネットで簡単に調べられる時代だ。Googleで検索する、ウィキペディアをチェックする、ブログやコラムがあったら目を通す。TwitterやFacebookをやっていれば、フォロー、友だち申請をする。メルマガがあれば読者登録する。セミナーなどは一番前の席で聴講し、1つは質問をし、名刺交換をする。終了後はお礼メールやお礼状を書き、自分が受け取った情報をTwitterやFacebookで発信する。「ひとつの出会いが生涯の師やパートナーシップにつながるかどうかは、実は会う前にほとんど決まっています。そのときに何をして、その後どうしたかで、みなさんの人生が変わるということを記憶しておいてください」。
一期一会を生かせるか否かは、結局は知・情・意の力次第なのだという。知情意とは、自ら情報の受発信を愉しむ意思、一期一会の出会いを愛でる情、そして必要な知恵を得る達人との縁だ。ネットで検索すれば出てくるようなものは知とは言わない。講義を聴いて得られるのは知識であって知恵ではない。知恵というのは現場で本人と交流しないと得られないものだ。「この文明塾でどんな立派な先生と名刺交換をしても、それだけで成功に役立つわけではありません。今言ったようなことをこれから会う先生全員とやれば、みなさんの人生は変わります。3カ月続ければやらないと気持ち悪くなります。今日せっかくいい話を聞いたのに発信してない、気持ち悪いと思えるようになれば、何をやっても成功するはずです」。
脳のパラボラと心のズーム
自分のライフワークを考える上で役立つのが、「3年後になりたい自分」をイメージし、やりたいことを書き出してマッピングしてみるという方法だ。こうした作業を通して、自分がやりたいこと、なりたいものへのアンテナを広げることを、久米さんは脳のパラボラ力と呼ぶ。「道を歩いていると、電線、看板、マンホールなど何でもおもしろいと思える。それは、パラボラアンテナがたくさん立っていて、一つひとつにズームする心があるということ。お金や地位や学歴がなくても、脳のパラボラと心のズームがある人は仕事ができるし、変革もできる。何より本人が幸せだと思います」。
ズーム力とは、たとえば子供が蟻の行列を30分でも眺めているような心だ。多くの場合、おとなになるとこのズームはさび付いてしまう。「パラボラは1個か2個にしかない、ズームも効かないというのは寂しい。せっかくこういう場に来ているポジティブなみなさんは、ぜひこれを働かせなくてはいけない。1年後、3年後に自分のフィールドを広げられるような、パラボラの師匠を探しましょう」。
そのためには、本業以外に、これが得意、これが好き、これに凝っているということを発信して仲間を作る。昔は地縁、血縁、学校、会社などに関係が限られていたが、ソーシャルメディアを利用できる今なら、簡単にたくさんの人と知り合える。「なんとなく緩くつながって、自分の興味あることをおもしろがる人を2000人ぐらい作りたい。そして、年に1回ぐらいは会いたいという仲間を200人ぐらい作りましょう」。
久米さんの場合は、本業のTシャツづくりを一生懸命やっていたら「日本発ものづくりプロジェクト」に誘われた、ブログで各地のおいしいものについて書いていたことがきっかけで墨田区の観光協会に関わるようになった、本の執筆につながった、というようにフィールドが広がってきたという。「文明塾でいろいろな人と触れあうのは、すごく貴重なチャンスです。縁・運・勘によって、来る前は想像もつかなかった方向へと自分のフィールドがどんどん広がっていく可能性を秘めているのです」。
自分のプリンシプルは何か?
久米さんは、大学時代のゼミの恩師、曹洞宗の住職である心の恩師など、折りに触れて出会った人の中から自らの「師匠」を見つけてきた。そんな師匠たちに共通するのは、年をとるほど楽しそうで、幸せそうなこと。自在に生きる心を持ったラジカルな人でありたい、天の意を感じる技を持つヴィジョナリーな人でありたい、孤高にして生々流転に動き続ける体を持つロックンロールな人でありたい。それが師匠たちの姿から久米さんが学んだプリンシプルだ。「それは自分で無理してなるものではないのです。天の声を聞いていると、自然にラジカルに、ヴィジョナリーに、ロックンロールな感じになる。そして、孤独じゃなくてつながっている。そういうものだと思います」。
このセッションに参加した塾生には、自分の「行動のプリンシプル」を考えるという事前課題が出されていた。その中から久米さんが抜粋した数名が発表を行った。
【塾生】
「柔軟に、そして粘り強く」
物腰を柔らかく保ちつつ、自分の意見もきちんと持っている、それを両立させたい。人によって考え方が違うのは当たり前なので、それを一度は素直に受け入れてみてから、自分で考えておかしいと思ったら勇気を出して言ってみる。
【久米さん】
松下政経塾出身の方に聞いた話によると、塾で学んだ一番の教えは「素直になりなはれ」だったそうです。素直にいろいろな価値観を受け入れて試しながら、失敗しながら、粘り強くやっていくうち、気がつくと成功していると。それに通じるものがあるかもしれませんね。
【塾生】
「現場主義」
本やニュースで見たことを伝えようとしてもうまく伝わらなかったが、自分が体験したことをストーリーも含めて心で伝えると相手も共感してくれた。
【久米さん】
一言で言えば、二次三次情報はゴミです。その意味ではソーシャルメディアの情報の7~8割はゴミだと私は思っています。マスメディアもかなりのゴミだと言えるでしょう。一番頼りになるのは、パラボラを作ったときにできたネットワークから得た、現場に詳しい師匠です。その人と一緒に現場を見に行って、自分で感じ、自分よりよく知っている人に聞いた話は生きた情報として聞く価値があるし、発信する価値もあると思います。ぜひ、いろんな現場を味わって、パラボラを増やして下さい。
●質疑応答
【塾生】
師匠との出会いなど自分が影響を受けた出来事は、そのときにパッと変わるものなのか、後から思い当たるものなのか、どちらでしょうか。
【久米さん】
両方のケースがありますね。でも、たいていはすごい考えほどそのときは気づかないように思います。すばらしい師匠ほど、「この人はなんかすごい」というのは分かります。そのときは「カッコイイ」止まりだったのが、だんだん自分が成長していくと、ああこういうことだったのかと気づいたりします。ですから、「この人は何を言っているかよく分からないけど、もしかしたら自分がもっと年をとったら分かるかもしれない」と思えるような人とも付き合うようにしています。
【塾生】
久米さんの信仰、ぶれない筋とはどんなものですか?
【久米さん】
そのときどき、神道、仏教、瞑想などいろんなものに凝ったりするので一言では言えません。ただ、瞑想をすることは大事にしています。瞑想で頭を空っぽにして集中しゼロリセットすると、自分のポテンシャルが出やすいと感じています。宗教とは「教え」というイメージがありますが、昔は健康法や瞑想法であることも多いのです。
【塾生】
気分の波をうまく対処して生きていくためのポイントを教えて下さい。
【久米さん】
仕事でいうと、「稼ぐ仕事」、「お金を出してでもやりたい仕事」、「ラストリゾート」の3つで考えるといいと思います。好きなことを仕事にできないという悩みは多いですが、稼ぐ仕事についてはむしろ好きじゃないものの方がいい。何も期待しない分、やってみたら意外におもしろいと思うものだし、好きなことをやってお金をもらおうなんておこがましいとも思っています。私はいくつかのNPOの理事をやっていますが、これはお金をもらうのではなく自分から払ってやっています。お金を出してでもやりたいと思うことにはすごく力が出るのです。ラストリゾートとは、いざとなったら食べていけるという最後の砦。それがあれば、上司に文句も言えます。働くように遊んで、遊ぶように働く、つまり何をやっても24時間楽しそうにしている人になってほしい。あとは体を動かすことも大事ですね。体を動かして心を動かすような趣味を持つのがリフレッシュできていいのではないでしょうか。
【塾生】
いろんなことに興味を持ちすぎて時間が足りません。パラボラをたくさん持っていらっしゃる久米さんは、どんなことを優先していますか?
【久米さん】
尊敬している脳科学者から聞いた話では、3年経つと脳の中で自動化の回路ができるそうです。だから、何かおもしろいと思ったら、とにかく3年続けてみること。続けることが大事なのですごく集中してやる必要はありません。ちょっとずつ細切れ時間を利用すればいいのです。コツコツと10年我慢して続けていれば、気がつかないうちに引き出しが増えているのです。
年をとると記憶力が衰えてきますが、その代わりいろいろな発想が浮かぶようになります。これはパラボラが増える、引き出しが増えるということなのだと思います。何かあったらネットに発信して、あとは忘れてしまっていい。引き出しにはちゃんと入っているから。何かのきっかっけで、脈絡もなくその引き出しが3つ4つ一度に開くので、それを組み合わせれば独創性が生まれます。人生は40歳,50歳を過ぎてからがおもしろいです。パラボラが多ければ、ズームがあれば、引き出しが多ければ、師匠がいれば、友だちがいれば、何を見てもおもしろくなります。今はいろいろなものに手を出しすぎていると思うかも知れないけれど、1日10分に減らして、コツコツ続けてみてください。
もうひとつ、今の日本に足りないのはブリッジパーソンです。たとえばNPOと企業をつなぐ人、アーティストとそろばんができる人をつなぐ人。NPO方言、アーティスト方言などいろいろな方言があるけれども、パラボラを増やすことでそれらを理解してつなげられるようになる。ひとつのことを掘り下げてスペシャリストになる道もあるけれども、多様な価値観を持っている人をつなぎ合わせて新しいものを作れるブリッジパーソンのスペシャリストになるという方法もあります。みなさんには、ぜひそんな人になってほしいと思います。
●クロージングメッセージ
波瀾万丈な人生にトライしよう
人生は波をなくした方が楽という考え方もあるけれども、今になって思うと波瀾万丈がいいなと思っています。今の時代、中の上を水平飛行してトラブルがないのが幸せと思いがちです。でも、仲の良い人と話をしていて盛り上がるのは最高にいい話と最悪で死ぬかと思ったという話。そして、自慢話は嫌われるけれど失敗談は楽しい。波瀾万丈でいろいろなことをたくさん経験するうちに、その波を心の中でコントロールできるようになるものです。若いうちはむしろ、コントロールしようとしないで、いろんなところで失敗すればいい。思い切って挑戦して、失敗したら話の種になるし経験値にもスキルにもなります。そういう気持ちで果敢にトライしてほしいと思います。
会社に入ると金太郎飴のように同質な人が集まっていることも多いですが、この文明塾のようにいろんな方がミックスしている場は、波瀾万丈を起こすチャンスです。心のメーターを最大限に振りながら、貴重な残り時間を生かしてがんばってください。
<編集後記>
塾生のどんな問いかけにも的確な事例を持ち出して対応する久米さんは、まさに「引き出しが豊富な人」いう印象を受けた。笑顔いっぱいのワクワクとした語り口で、年を重ねるのが楽しくなる生き方への、ヒントと刺激を発信してくれたセッションだった。

今回講師にお迎えした久米さんは、家業の三代目として老舗国産Tシャツメーカーを経営する傍ら、IT系メディアや本の執筆、地域起こし系のNPO、大学でベンチャービジネス論を教えるなど、多彩な活動を行っている。それらの体験を元に、自らを支え行動にかき立てる「プリンシプル」について考えるセッションが行われた。

 

 

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一期一会を生かしきる

 

久米さん自身のプリンシプルのひとつは「一期一会を生かしきる」ことだ。そのために大事なのは、会う前に相手のことをよく調べて愛情を持つことなのだという。「会いたい人がいたら、その人が好きなものや一番大切にしていることを調べてください。会ったときにそのことを伝えて相手とシンクロできれば、親しくなれるチャンスが生まれるかもしれません」。

トップセールスマンは、顧客の好きなものを知っていれば営業は半分以上終わったようなものだというが、昔は接待ゴルフを何度もやってようやく聞き出していた情報を、今はネットで簡単に調べられる時代だ。Googleで検索する、ウィキペディアをチェックする、ブログやコラムがあったら目を通す。TwitterやFacebookをやっていれば、フォロー、友だち申請をする。メルマガがあれば読者登録する。セミナーなどは一番前の席で聴講し、1つは質問をし、名刺交換をする。終了後はお礼メールやお礼状を書き、自分が受け取った情報をTwitterやFacebookで発信する。「ひとつの出会いが生涯の師やパートナーシップにつながるかどうかは、実は会う前にほとんど決まっています。そのときに何をして、その後どうしたかで、みなさんの人生が変わるということを記憶しておいてください」。

 

一期一会を生かせるか否かは、結局は知・情・意の力次第なのだという。知情意とは、自ら情報の受発信を愉しむ意思、一期一会の出会いを愛でる情、そして必要な知恵を得る達人との縁だ。ネットで検索すれば出てくるようなものは知とは言わない。講義を聴いて得られるのは知識であって

kume-2.jpg知恵ではない。知恵というのは現場で本人と交流しないと得られないものだ。「この文明塾でどんな立派な先生と名刺交換をしても、それだけで成功に役立つわけではありません。今言ったようなことをこれから会う先生全員とやれば、みなさんの人生は変わります。3カ月続ければやらないと気持ち悪くなります。今日せっかくいい話を聞いたのに発信してない、気持ち悪いと思えるようになれば、何をやっても成功するはずです」。

 

脳のパラボラと心のズーム

 

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自分のライフワークを考える上で役立つのが、「3年後になりたい自分」をイメージし、やりたいことを書き出してマッピングしてみるという方法だ。こうした作業を通して、自分がやりたいこと、なりたいものへのアンテナを広げることを、久米さんは脳のパラボラ力と呼ぶ。「道を歩いていると、電線、看板、マンホールなど何でもおもしろいと思える。それは、パラボラアンテナがたくさん立っていて、一つひとつにズームする心があるということ。お金や地位や学歴がなくても、脳のパラボラと心のズームがある人は仕事ができるし、変革もできる。何より本人が幸せだと思います」。ズーム力とは、たとえば子供が蟻の行列を30分でも眺めているような心だ。多くの場合、おとなになるとこのズームはさび付いてしまう。「パラボラは1個か2個にしかない、ズームも効かないというのは寂しい。せっかくこういう場に来ているポジティブなみなさんは、ぜひこれを働かせなくてはいけない。1年後、3年後に自分のフィールドを広げられるような、パラボラの師匠を探しましょう」。

そのためには、本業以外に、これが得意、これが好き、これに凝っているということを発信して仲間を作る。昔は地縁、血縁、学校、会社などに関係が限られていたが、ソーシャルメディアを利用できる今なら、簡単にたくさんの人と知り合える。「なんとなく緩くつながって、自分の興味あることをおもしろがる人を2000人ぐらい作りたい。そして、年に1回ぐらいは会いたいという仲間を200人ぐらい作りましょう」。久米さんの場合は、本業のTシャツづくりを一生懸命やっていたら「日本発ものづくりプロジェクト」に誘われた、ブログで各地のおいしいものについて書いていたことがきっかけで墨田区の観光協会に関わるようになった、本の執筆につながった、というようにフィールドが広がってきたという。「文明塾でいろいろな人と触れあうのは、すごく貴重なチャンスです。縁・運・勘によって、来る前は想像もつかなかった方向へと自分のフィールドがどんどん広がっていく可能性を秘めているのです」。

 

自分のプリンシプルは何か?

 

久米さんは、大学時代のゼミの恩師、曹洞宗の住職である心の恩師など、折りに触れて出会った人の中から自らの「師匠」を見つけてきた。そんな師匠たちに共通するのは、年をとるほど楽しそうで、幸せそうなこと。自在に生きる心を持ったラジカルな人でありたい、天の意を感じる技を持つヴィジョナリーな人でありたい、孤高にして生々流転に動き続ける体を持つロックンロールな人でありたい。それが師匠たちの姿から久米さんが学んだプリンシプルだ。「それは自分で無理してなるものではないのです。天の声を聞いていると、自然にラジカルに、ヴィジョナリーに、ロックンロールな感じになる。そして、孤独じゃなくてつながっている。そういうものだと思います」。

 

 

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このセッションに参加した塾生には、自分の「行動のプリンシプル」を考えるという事前課題が出されていた。その中から久米さんが選出した数名が発表を行った。

 

【塾生】

「柔軟に、そして粘り強く」

物腰を柔らかく保ちつつ、自分の意見もきちんと持っている、それを両立させたい。人によって考え方が違うのは当たり前なので、それを一度は素直に受け入れてみてから、自分で考えておかしいと思ったら勇気を出して言ってみる。

 

【久米さん】

松下政経塾出身の方に聞いた話によると、塾で学んだ一番の教えは「素直になりなはれ」だったそうです。素直にいろいろな価値観を受け入れて試しながら、失敗しながら、粘り強くやっていくうち、気がつくと成功していると。それに通じるものがあるかもしれませんね。

 

 

【塾生】

「現場主義」

本やニュースで見たことを伝えようとしてもうまく伝わらなかったが、自分が体験したことをストーリーも含めて心で伝えると相手も共感してくれた。

 

【久米さん】

一言で言えば、二次三次情報はゴミです。その意味ではソーシャルメディアの情報の7~8割はゴミだと私は思っています。マスメディアもかなりのゴミだと言えるでしょう。一番頼りになるのは、パラボラを作ったときにできたネットワークから得た、現場に詳しい師匠です。その人と一緒に現場を見に行って、自分で感じ、自分よりよく知っている人に聞いた話は生きた情報として聞く価値があるし、発信する価値もあると思います。ぜひ、いろんな現場を味わって、パラボラを増やしてください。

 

 

質疑応答

 

【塾生】

師匠との出会いなど自分が影響を受けた出来事は、そのときにパッと変わるものなのか、後から思い当たるものなのか、どちらでしょうか。

 

【久米さん】

両方のケースがありますね。でも、たいていはすごい考えほどそのときは気づかないように思います。すばらしい師匠ほど、「この人はなんかすごい」というのは分かります。そのときは「カッコイイ」止まりだったのが、だんだん自分が成長していくと、ああこういうことだったのかと気づいたりします。ですから、「この人は何を言っているかよく分からないけど、もしかしたら自分がもっと年をとったら分かるかもしれない」と思えるような人とも付き合うようにしています。

 

 

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【塾生】

久米さんの信仰、ぶれない軸とはどんなものですか?

 

【久米さん】

そのときどき、神道、仏教、瞑想などいろんなものに凝ったりするので一言では言えません。ただ、瞑想をすることは大事にしています。瞑想で頭を空っぽにして集中しゼロリセットすると、自分のポテンシャルが出やすいと感じています。宗教とは「教え」というイメージがありますが、昔は健康法や瞑想法であることも多いのです。

 

【塾生】

気分の波をうまく対処して生きていくためのポイントを教えてください。

 

【久米さん】

仕事でいうと、「稼ぐ仕事」、「お金を出してでもやりたい仕事」、「ラストリゾート」の3つで考えるといいと思います。好きなことを仕事にできないという悩みは多いですが、稼ぐ仕事についてはむしろ好きじゃないものの方がいい。何も期待しない分、やってみたら意外におもしろいと思うものだし、好きなことをやってお金をもらおうなんておこがましいとも思っています。私はいくつかのNPOの理事をやっていますが、これはお金をもらうのではなく自分から払ってやっています。お金を出してでもやりたいと思うことにはすごく力が出るのです。ラストリゾートとは、いざとなったら食べていけるという最後の砦。それがあれば、上司に文句も言えます。働くように遊んで、遊ぶように働く、つまり何をやっても24時間楽しそうにしている人になってほしい。あとは体を動かすことも大事ですね。体を動かして心を動かすような趣味を持つのがリフレッシュできていいのではないでしょうか。

 

 

【塾生】

いろんなことに興味を持ちすぎて時間が足りません。パラボラをたくさん持っていらっしゃる久米さんは、どんなことを優先していますか?

 

【久米さん】

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尊敬している脳科学者から聞いた話では、3年経つと脳の中で自動化の回路ができるそうです。だから、何か増える、引き出しが増えるということなのだと思います。何かあったらネットに発信して、あとは忘れてしまっていい。引き出しにはちゃんと入っているから。何かのきっかっけで、脈絡もなくその引き出しが3つ4つ一度に開くので、それを組み合わせれば独創性が生まれます。人生は40歳,50歳を過ぎてからがおもしろいです。パラボラが多ければ、ズームがあれば、引き出しが多ければ、師匠がいれば、友だちがいれば、何を見てもおもしろくなります。今はいろいろなものに手を出しすぎていると思うかも知れないけれど、1日10分に減らして、コツコツ続けてみてください。おもしろいと思ったら、とにかく3年続けてみること。続けることが大事なのですごく集中してやる必要はありません。ちょっとずつ細切れ時間を利用すればいいのです。コツコツと10年我慢して続けていれば、気がつかないうちに引き出しが増えているのです。年をとると記憶力が衰えてきますが、その代わりいろいろな発想が浮かぶようになります。これはパラボラが

もうひとつ、今の日本に足りないのはブリッジパーソンです。たとえばNPOと企業をつなぐ人、アーティストとそろばんができる人をつなぐ人。NPO方言、アーティスト方言などいろいろな方言があるけれども、パラボラを増やすことでそれらを理解してつなげられるようになる。ひとつのことを掘り下げてスペシャリストになる道もあるけれども、多様な価値観を持っている人をつなぎ合わせて新しいものを作れるブリッジパーソンのスペシャリストになるという方法もあります。みなさんには、ぜひそんな人になってほしいと思います。

 

 

クロージングメッセージ

 

波瀾万丈な人生にトライしよう

 

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人生は波をなくした方が楽という考え方もあるけれども、今になって思うと波瀾万丈がいいなと思っています。

今の時代、中の上を水平飛行してトラブルがないのが幸せと思いがちです。でも、仲の良い人と話をしていて盛り上がるのは最高にいい話と最悪で死ぬかと思ったという話。そして、自慢話は嫌われるけれど失敗談は楽しい。波瀾万丈でいろいろなことをたくさん経験するうちに、その波を心の中でコントロールできるようになるものです。若いうちはむしろ、コントロールしようとしないで、いろんなところで失敗すればいい。思い切って挑戦して、失敗したら話の種になるし経験値にもスキルにもなります。そういう気持ちで果敢にトライしてほしいと思います。

 

会社に入ると金太郎飴のように同質な人が集まっていることも多いですが、この福澤文明塾のようにいろんな方がミックスしている場は、波瀾万丈を起こすチャンスです。心のメーターを最大限に振りながら、貴重な残り時間を生かしてがんばってください。

 

編集後記

 

塾生のどんな問いかけにも的確な事例を持ち出して対応する久米さんは、まさに「引き出しが豊富な人」いう印象を受けた。笑顔いっぱいのワクワクとした語り口で、年を重ねるのが楽しくなる生き方への、ヒントと刺激を発信してくれたセッションだった。

 

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